続・オオハリアリ属"パンドラの箱"。和歌山県、山林内サンプル。

前回手を出し始めてしまったパンドラの箱「オオハリアリとナカスジハリアリの違い」についての検証。

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今回は和歌山県の山林内でサンプルを採集してきたので見ていきたい。

 

よく似た両種を区別するポイントは以下の通り、前胸と腹柄節だった。

<前胸>

・オオハリアリ

「背方から見て前胸背板前縁は丸みを帯びる」

・ナカスジハリアリ

背方から見て前胸背板前縁は角ばる

 

<腹柄節>

・オオハリアリ

「腹柄節背面は後方から見てより強く弧を描く」

・ナカスジハリアリ

腹柄節背面は後方から見てより緩やかな弧を描く

 

さて、今回のサンプルの特徴はどうか。

まずは「背方から見て前胸背板前縁は"丸みを帯びている"or"角ばっている"」の検証。

う〜ん、角ばっているように見えるな〜

角度によっては肩部に突起のような角があるようにも見える。

和歌山県の山林内で採集したサンプル"背方から見て前胸背板の前縁は角ばっている...?"

和歌山県の山林内で採集したサンプル。前胸の肩部が尖っているようにも見える。

 

次に「腹柄節背面は後方から見て"より強く弧を描く"or"より緩やかな弧を描く"」の検証。

・・・これはまだ分からないな・・・

前胸の特徴から「ナカスジハリアリなのでは?」とイメージが引っ張られるが腹柄節の見た目はまだまだどちらとも判断がつかない・・・

腹柄節を後方から見る

腹柄節を後方から見る。やや幅が広いようにも見えるが判断するにはまだまだ不十分。。

 

今回の和歌山県内の山林内で採集したサンプルについては前胸の特徴がナカスジハリアリの特徴を示しているように見えたので印象としては「ナカスジハリアリである可能性の方が高いのかな・・・?」と感じたが、そうなってくると今度は「オオハリアリの可能性のあるサンプル」を採集し、前胸&腹柄節の特徴を再度見てみたい欲求に駆られる。

それぞれのサンプルが明らかに異なる特徴を示すのなら、この両種を区別するすごく分かりづらい特徴の見分け方が少しずつ見えてくるだろう。

 

さて・・・今度は市街地でサンプル採集かな・・・

すごく順調に進んだヒラアシクサアリの初期寄生

例年5~7月はクサアリの仲間の結婚飛行の時期だ。

今年はクサアリについて少し詳しく見ていきたいという願望を持っていた僕はクサアリの女王を見ると必ず腹柄節を確認し、種の判別を試みることにしている。

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それ程頻繁にフィールド観察に出掛けられていないということもあり、今年の成果は今のところクロクサアリの脱翅雌が1匹、残りは数十匹に及ぶヒラアシクサアリのオンパレードだった。。

我が家では今年の始めまで飼育していたヒラアシクサアリが滅亡してしまっていた為、新しいヒラアシクサアリ女王を数匹持ち帰り新たに飼育を始めてみることにした。

ヒラアシクサアリの新女王(2023年6月中旬結婚飛行)



ヒラアシクサアリはケアリの仲間に一時的社会寄生を行う寄生種だ。

ヒラアシクサアリが寄生する相手は飼育者にとって最も入手しやすいトビイロケアリであることから、寄生種の中でも最も飼育をチャレンジしやすいアリと言えるだろう。

寄生の方法はヒラアシクサアリの新女王にまず数匹のトビイロケアリワーカーを同居させ馴染ませる。

寄生の初期段階としてヒラアシクサアリ新女王を2匹のトビイロケアリワーカーと同居させる

同居が出来たら以降のトビイロケアリ導入は成虫のワーカーではなく繭を入れる。成虫はヒラアシクサアリに対して攻撃的な行動をとる可能性が高く、導入後に繭から羽化した新しいワーカーは攻撃をすることがほぼ無いからだ。

大量のトビイロケアリの繭を用意



今回ヒラアシクサアリを含めたケアリ寄生種を飼育するにあたり、以前からしていた準備があった。

それは「予めトビイロケアリを飼育しておく」ことだ。

ケアリ寄生種の寄生は必要なものさえ揃えれば比較的成功する確率が高い。ただ、いざケアリ寄生種の新女王を見つけた時に都合よくそれらが揃えられるかと言えばそう簡単にいかないことが多い。

その"必要なもの"こそ、「トビイロケアリの繭」である。

 

我が家では2020年の冬に枯枝内で単独で越冬していたトビイロケアリを採集して飼育していた。最初はあまりうまくいっていなかったが、2022年頃から良い流れに乗り始めて爆増。2023年現在では恐らく1000匹を越えている大きなコロニーとなっている。

予め飼育していたトビイロケアリコロニー



このトビイロケアリコロニーの飼育巣内に、採っても採りきれない程の繭があったことで、今年採集したヒラアシクサアリ女王1匹に対し100個以上の繭を簡単に導入することが出来た。繭を確保出来ていたから最初に寄生させた成虫のワーカーもわずか3~4匹程。後は全て繭の導入で賄った。

繭の羽化は最初に導入した数匹のワーカーが全て行う。無理そうに感じるかもしれないが繭は全て同時に羽化するわけでは無いから1匹、また1匹とワーカーが羽化すれば繭を羽化させる成虫のワーカーの数はねずみ算式に増え、ほぼ全ての繭は問題なく羽化を終えるのだ。

トビイロケアリワーカーの成虫が繭の羽化を手伝う



トビイロケアリの羽化の大半が済んだ時、ヒラアシクサアリ新女王を中心にヒラアシクサアリに攻撃を行わない安全なワーカー100匹以上が集う寄生コロニーが出来上がる。

100匹以上のトビイロケアリワーカー達がヒラアシクサアリ新女王を取り巻く寄生コロニー



こうなればヒラアシクサアリ新女王にとっては理想的な環境だ。

すぐに産卵を開始しものすごい勢いで卵塊は大きくなった。

産卵を始めたタイミング、産卵数ともに今まで飼育してきたヒラアシクサアリの比ではない。

状況さえうまく作ってあげられればしっかりと応えてくれるヒラアシクサアリ。

このまま颯爽とコロニー化を遂げてくれるのか注目だ。

産卵の勢いがすごい!!

 

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チクシトゲアリの幼虫が吐き出す糸

現在我が家ではチクシトゲアリを飼育している。

チクシトゲアリのコロニー

2021年2月に採集した単独越冬女王を一から育てているものだ。

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おそらく2020年の晩夏に飛んだであろうこの女王の飼育はいろいろな試行錯誤を経て何とか形になってきたが、一つ注目すべき点がある。



飼育巣内でコロニーが居座る場所の周辺で、飼育巣側面と天板のポリカーボネートが曇っているのだ。

もちろんアリのコロニーを長く飼育していれば飼育巣内は汚れていくものだが、どうもこのチクシトゲアリの飼育巣内の曇り方は他のアリの場合とは違う…

「汚れている」というよりは「何かが貼り付いている」というような雰囲気なのだ。

チクシトゲアリの巣内に出来た"何かが貼り付いたような曇り"



この「トゲアリの仲間」「何かが貼り付いている」という条件でとある記憶が引き出される。

南西諸島に生息するクロトゲアリというアリは幼虫が吐き出す糸で草の葉を繋ぎ合わせて巣を作る習性を持つ。

これ自体は比較的知られたクロトゲアリの特徴的な生態なのだが、確か…チクシトゲアリにも何か書いてあったな…

 

日本産アリ類図鑑を読み返すとチクシトゲアリの項に「枯枝内などに営巣するが、幼虫が吐き出す糸で巣を作る行動も確認されている」旨の記載があった。

やっぱり…

チクシトゲアリはクロトゲアリのように幼虫の糸での巣作りに特化してはいないものの、メインとなる枯枝内営巣に加えてサブアビリティ的に幼虫の吐き出す糸を利用する能力も持っているということなのだろう。

ちなみに、チクシトゲアリはクロトゲアリと同じマルトゲアリ亜属である。

 

つまり、我が家のチクシトゲアリの飼育巣内で見られる壁面と天板の曇りは幼虫の吐き出す糸を使ってアリ達が何かDIY(眩しいので光を遮る、ポリカーボネートのツルツルの壁面に違和感を感じて取り敢えず糸を貼り付けてみているなど)をした痕跡なのではないだろうか。

チクシトゲアリの貴重な行動を観察できた...?



自然下のチクシトゲアリが実際に幼虫の糸をどのように使っているのかは分からないが、そのサブアビリティ的な行動を飼育下で観察出来たのはとても貴重なのだと思う。

試行錯誤を繰り返しながら四苦八苦で育ててきたチクシトゲアリ。

たまには良いものを見せてくれるじゃないか。

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クロオオアリの成長速度と観察のしやすさは比例する!…我が家では。

我が家で今絶好調のコロニーがある。

クロオオアリのコロニーだ。

クロオオアリのコロニー(スケルトン巣)

新女王を採集したのは2018年5月だから、6年目のコロニーということになる。

現在のワーカー数は推定約700匹。

6年目のコロニーであることを考えれば特段に多い数ではないが、これまでの6年間には浮き沈みがあった。

今回はこれを振り返ってみたい。

 

👍2018年5月 新女王飛行(飛行の様子)

👍2018年7月 初ワーカー誕生(ワーカー数1)

👍2018年9月 縦重ね型石膏巣に入居(ワーカー数約25)

👍2018年12月 越冬(ワーカー数約25)

😞2019~2021年 あまり記録残っておらず(ワーカー数最大300匹程度)

👍2022年1月 現在のスケルトン巣に引越し(ワーカー数)

👍2023年7月現在 スケルトン巣で絶好調(ワーカー数約700匹)

 

1年目で無事にコロニー化し、冬を迎えた段階でワーカー25匹というのは特段多いわけではないが、かと言って少ないわけでもない。まずまずの順調なスタートだ。

問題はそこから。2019年から2021年までほとんで記録を残していないし、そもそもこの期間ほとんど観察していない…(汗)

2018年~2021年に使用していた"縦重ね型石膏巣"。壁面が内側から汚されると中を観察出来ない・・・



この理由は"とにかく巣を汚す"クロオオアリの特性だ。

クロオオアリは同条件で飼育をした場合のムネアカオオアリなどに比べて圧倒的に巣を汚す。一般的に樹上種と土中種を比べた場合土中種の方が飼育巣を早く汚す傾向にあると思っているが、クロオオアリはその点で代表的な存在だ。

2年目以降、成長を続けるコロニーは比例して巣内の活動も増える。その結果、「ワーカーが増えるのは嬉しいが巣が汚れてどんどん観察がしづらくなっていく」というジレンマが発生してしまうのだ。

 

僕は聖人ではないから、巣内が見づらくなれば「今月どれくらい増えたのか」「エサの食べ方は良いのか」「巣内環境(湿度や汚染状況)はどうか」などを察知することが難しくなり、その結果飼育モチベーションが下がっていく。

エサやりの量や頻度、給水の具合、引越しや増設の判断などが鈍り、少しずつベストな状態からズレていく。。

 

結果として2019年から2021年までの期間は衰退はしなかったもののコロニーの成長速度は停滞してしまっていた(…ように思う、見えないから…)。

 

さて、この「クロオオアリ見えない問題」は今に始まったことではない。

かねてからクロオオアリを飼育する度に悩まされてきた厄介な問題だったのだ。

2022年の始め、この問題に対処することを目的とした「蓋スライド型両面採光式土中種観察巣(スケルトン巣)」を制作。クロオオアリを入居させた。

この飼育巣は"どんなに汚されても観察面を取り替えて綺麗にできる"という機能を備える。

 

「クロオオアリ…綺麗だな〜」

「知らない(見えない)間にこんな規模になっていたのか…」

「あ!産卵してる!」

「巣内にエサが運び込まれた…!!」

クロオオアリの美しい姿

たくさんの卵が集められた卵塊

繭が集められた場所もハッキリ見える

…これまで低空飛行だった僕のクロオオアリ観察モチベーションは一変した。

巣内の細かな変化は逐一確認出来るようになり、エサの量や頻度もその都度調整出来るようになった。

そう、"見える"から!!

 

飼育環境が様々改善されたクロオオアリのコロニーはスケルトン巣に引越ししてから明らかに成長速度を増し、一気に700匹規模に成長した。

もう一段階成長したらもしかしたら新女王など出てくるんじゃないか??

淡い期待を抱かせるのも巣内を見渡すことができるから。

 

クロオオアリの成長速度と観察のしやすさは比例する!…我が家では!!

 

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何だかいけそうな気がする…!6月採集エゾクシケアリ女王

6/4採集のエゾクシケアリの女王。

草地を歩くエゾクシケアリ女王



この女王は不思議なことで一杯だ。

まずは採集地。この個体は和歌山県で得られ、近くの河川沿いには割としっかりとした生息地が広がっていた。

エゾクシケアリの生息地は「中部地方以北」というイメージを持っていただけにそもそもここにエゾクシケアリがいたこと自体驚きだが、僕が持つこの「中部地方以北」というイメージは日本産アリ類画像データベース等に由来しておりこの情報は古くかつ不完全だ。

改めて調べるとエゾクシケアリの生息地はもう少しだけ西方、南方に広がっているようなデータが見つかった。

それにしても北方系のエゾクシケアリがこんなところにまで棲んでいるなんて意外だ…

 

もう一つは女王が見つかった時期。

エゾクシケアリの結婚飛行の時期は7月以降の夏季…と思っている。

この個体を採集したのは6/4で1ヶ月以上早い。

しかし、クロナガアリが3月中旬には飛行し、クロヤマアリクロクサアリが4月に飛んだ情報もあった今年、多くの種で大幅に飛行時期が早まった印象があることを考えると「6月上旬、エゾクシケアリ」はギリギリ可能性のあるラインなのだろうか?

…かなり微妙だな〜、生息地南限に近いだろうからその点でも早いのかな〜

 

このエゾクシケアリ女王は"南限に近い場所でかつ近年の結婚飛行時期の早まり"によって6月上旬に飛行を終えた個体という可能性もあるし、何らかの理由で巣外へ出てきてしまった既存コロニーの女王という線も無くは無い(怪我などで弱っている気配がないので可能性は低いかな〜?)。

 

かくしてこの"季節外れ(?)"の女王の飼育管理が始まった。

飼育巣は3wayメッシュ石膏巣。この女王は巣内で常に歩き回り落ち着きがないので石膏で小さな板を作りパーテーションとして巣内に追加。すると女王はそこへ落ち着いてくれた。…良かった。

3wayメッシュ石膏巣に石膏板のパーテーションを追加した飼育巣

エサは体力補強の為の少量の蜜エサに加え、ヒラタコクヌストモドキを投入。

クシケアリ属ではないが、ツヤクシケアリ属のツヤクシケアリは女王が単独で採餌を行うという朧げな記憶がある。クシケアリもそんな行動をする可能性があるかもしれない(重ねて、クシケアリ属とツヤクシケアリ属は違う属ですが…)。

 

割と頻繁に巣内を歩き回るエゾクシケアリ女王はヒラタコクヌストモドキにもすぐに反応し齧る仕草を見せた。

ヒラタコクヌストモドキを齧るエゾクシケアリ女王



女王は程なくして産卵を開始。

順調に幼虫も育ってきた。

幼虫が育ってからは与えたヒラタコクヌストモドキは幼虫のもとへ運ばれ幼虫はそれを食べる…うん、良い感じ!

 

7月中旬、蛹の姿が確認できた。

蛹は裸蛹タイプ。

幼虫や蛹が育った巣内

しばらくしたらワーカーが羽化するだろう。

何だかこのままいけそうな気がする!

 

…果たして、結局この女王は新女王だったのかな??

 

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頑張れカドフシアリ!

現在我が家で孤軍奮闘しているアリがいる。

カドフシアリの女王。

昨年10月末に林床に転がった堅果の中から見つかった単独女王。恐らくこの年の晩夏に飛行して女王単独での越冬に入ろうとしていた個体だろう。

僕自身はカドフシアリにあまり出会ったことがない。

単独女王に出会うのは2度目、コロニーは山林内の斜面の土中で巣を見つけたことがあるだけだ。ひとまず女王を持ち帰ることにしたのだが、彼らの難点は「ササラダニ類を主なエサとする」その食性だ。

 

果たして飼育管理は出来るのか…?

 

同時にこんな遠い記憶もおぼろげに浮かんでくる。

昔誰かが飼育されていたような気が…じゃあいけるかな…?

 

カドフシアリの女王

 

かくして飼育管理が始まった。

飼育巣は"擬似ドングリ石膏巣"。エサは少量の蜜エサと時折与えるヒラタコクヌストモドキ。ササラダニを採ってきて与えるなど出来ないのでこれが精一杯だ。

 

「エサが合わないかもしれない」

「女王単独では体力が保つか不安」

 

いつ突然の別れが来てもおかしくない状況下でまずは越冬を迎える。

 

…越えた!

 

しかし、春を迎えても産卵はなかなか始まらない。このようなケースでは大抵の場合、大きな期待を背負いながらも産卵には至らず女王はいつか天国へ旅立ってしまう。

このカドフシアリ女王もそのパターンかもしれない。

そんな考えも頭をよぎり始めた6月上旬、ついに女王は産卵をした!

採集から約7ヶ月、よく頑張ってくれた…!

でもここからが大変だ。ワーカー誕生までいけるか…?!

 

7月に入り巣内では1匹だけ幼虫が成長していた。

卵は…少し減っている。食卵もしているかもしれないな。

だが1匹でもワーカーが生まれてくれれば状況は変わるだろう。

 

カドフシアリの女王、卵、幼虫

 

頑張れカドフシアリ!

もうちょっとだ!!

 

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パンドラの箱。オオハリアリとナカスジハリアリ。

先日、倒木下を探りダルマアリとテラニシハリアリを採集した日。

土壌や木屑の中を探る中で最もたくさん出てきたサンプルがオオハリアリの仲間だ。

森林内はもちろんのこと、都市公園や市街地でさえも目にするこのオオハリアリ。全くもってレア感が湧かない為、この日も一応サンプル採集はしたもののしばらく放置していた。

 

…しかし頭の奥では分かっている。「オオハリアリ」に見えるアリは一種ではないと。。

 

かつて「オオハリアリ」という一つの種とされていたアリは現在では「オオハリアリ」と「ナカスジハリアリ」という2種に分かれるとされている。

それぞれはとてもよく似ているが形態上でもわずかな違いがあり識別可能なのだそう。

形態上の違いがどんなものであるかは頭に入っていないが、オオハリアリは市街地など人の手の入った環境でも生息しているのに対しナカスジハリアリは森林内に多いとされている。

 

今回森林内で採集したサンプルは実はナカスジハリアリなのではないのか??

そんな淡い期待が湧いてきた。

「ちょっと…検証してみようか…」

 

日本産アリ類図鑑によれば両種を識別可能な形態的特徴は前胸と腹柄節に現れているようだ。

 

<前胸>

・オオハリアリ

「背方から見て前胸背板前縁は丸みを帯びる」

・ナカスジハリアリ

背方から見て前胸背板前縁は角ばる

 

<腹柄節>

・オオハリアリ

「腹柄節背面は後方から見てより強く弧を描く」

・ナカスジハリアリ

腹柄節背面は後方から見てより緩やかな弧を描く

 

…どちらも相対的な特徴に見える為、比較対象が必要だ。

自宅(市街地)を出てすぐのところでアスファルトを歩くオオハリアリ(推定)をサンプル採集して森林内で採ってきたサンプルと比べてみる…

 

オオハリアリ属比較サンプル

 

う〜ん…微妙…

森林からのサンプルの方が前胸が角ばっているようにも見えるが、腹柄節の特徴に違いがあるのか自信が持てない…

これは恐らくもっとたくさんのサンプルを見比べて、特徴を掴まなければいけないのだろう。

 

判別が難しいのは分かっていたが手を出してしまった…

オオハリアリとナカスジハリアリ。

難解なパンドラの箱を開けてしまった…

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