夏に飛ぶオオアリ女王。ややこしさ調査。

7月。梅雨の終わりから夏が始まるこの時期。

この季節も多くの種が結婚飛行を行う時期だ。

ウメマツオオアリ亜属のアリ達やヒラズオオアリ、クサオオアリなどを含む小型〜中型オオアリの仲間もこの季節に飛行を行う代表的なグループだ。

これらのオオアリの仲間は夕方〜夜間に飛行し、しばしば灯火にも集まる為、見つけやすいアリでもある。

「ならばいろんな種を簡単に見つけることが出来る!」

…と思うかもしれないが、ここで愕然とする事実が立ちはだかる。 

『みんな似ていてわけがわからない問題』である…

 

明確に頭部の形状が違うヒラズオオアリは良いとして、以下のアリ達はしばしば似過ぎている為に混乱を招く。

 

<混乱を招くアリ達>

ウメマツオオアリ

ホソウメマツオオアリ

イトウオオアリ

クサオオアリ

ナワヨツボシオオアリ

 

今回はこれについて考えを巡らせてみたい。

 

7月某日、和歌山県某所で灯火に飛来した複数種の有翅雌や脱翅雌をいくらか採集してきた。

ケアリやシリアゲアリ、ヒラズオオアリなどの分かりやすい種の中に、"数種が含まれるであろう"中型オオアリ達もいた。

これらの中型オオアリ達をサンプルとして選り分け、見分けづらい各サンプルの体格などの特徴を探ってみることにした。

中型オオアリ脱翅雌サンプル8体

採集時に漠然と"複数種いるな"と感じていたが、整理するとサイズの違う大小2パターンが含まれていた。

小型サンプル3体 体長約6mm(検証時サンプルの死後1~2ヶ月が経過しているため腹部が小さく縮んでいる)

中型サンプル5体 体長約7mm(検証時サンプルの死後1~2ヶ月が経過しているため腹部が小さく縮んでいる)

他のサンプルより1mm程小さいサンプル3つはイトウオオアリではないかと推測するがどうだろう。

各サンプルを「側面」「頭部」「背面」から撮影し、特徴がないか探してみた。

側面からのサンプル比較

まず側面からの比較で見るとサイズの小さい①〜③は胸部の盛り上がりが弱くより平べったく見える。逆に④〜⑧は盛り上がりが強くよりゴツく見える。

腹柄節は明確な差は・・・無いかな〜

そしてサンプル⑧は腹部にハッキリと"星"の斑紋が見える(ただし肉眼ではほとんど分からない)。脚全体が明るい色をしているのも特徴的だ。

そうか、サンプル⑧はナワヨツボシオオアリだったのか・・・

頭部のサンプル比較 ※サンプル④は頭部にダメージあり

頭部はどうだろう。

小型なイトウオオアリは頭部も小さくやや複眼が突出しているような"顔"になる。

①〜③はそんな特徴がある気がするし、⑤〜⑥は顔が張っていて複眼の突出も少ない気がする。⑦は・・・微妙だな〜

頭盾などに種ごとの特徴が現れそうな気もするが、鮮明に撮影することができなかった・・・

背面からのサンプル比較 ※サンプル④は頭部にダメージあり

最後に背面からのアングル。

①〜③は頭幅と胸部の幅のバランスから他より若干華奢な印象を受けるが・・・これは誤差程度にも感じる。肉眼でサイズを見れば①〜③は④〜⑧と確かに違うのだが、写真でサイズが分からなくなるとより一層違いが見えづらい・・・

④〜⑧はと言えば種を判別できるような差異は見つけられない・・・

側面比較と併せて④のサンプルは腹部の節の立毛が目立つような気がするけど角度や光の加減かな〜

 

・・・ということで、最終的な判断は以下のようになった。

①〜③イトウオオアリ

④〜⑦ウメマツオオアリ?(生息地的にはホソウメマツオオアリの可能性もあり?)

⑧ナワヨツボシオオアリ

 

複数のサンプルを見比べれば何か分かるのではないかと期待した"夏のオオアリややこしさ調査"。

これも何回かやらないとダメなやつだな。。

アギトアリが飛んだ夜

8月下旬。

異常な暑さに見舞われた今年の夏は8月も後半に差し掛かると"毎日スコールが降る"という熱帯のような天候パターンを見せた。

8月後半から結婚飛行を始めるアリとしてはトゲアリキイロシリアゲアリ、そしてアギトアリなどが挙げられる。

連日の厳しい暑さの中で昼過ぎから夕方にかけて短時間の激しいスコールが降るとなれば翌日はアリの結婚飛行のチャンスではあるが、翌日もまたスコールが降る、そのまた翌日も…

これでは飛行を行おうとするアリ達を雨が直撃してしまい大規模な結婚飛行は期待出来ない。このパターンはいつまで続くのか…

局所的に降るスコール



週末。雨予報の弱まった日曜日。

「これはいけるかもしれない…!」

ターゲットにアギトアリを選択し、彼らの生息するフィールドへ出掛けることにした。

 

アギトアリの飛行時間帯は夕方から夜。

この日は19時を狙って出掛けたが、その間も雨雲レーダーを見ると絶えず小さな雨雲が発生してはフィールドを掠めていた…危ない危ない…

危ぶまれていた雨は降らず、良い条件の揃った夜となった。

夜19:00。フィールドへ到着。

過去にアギトアリの有翅雌や脱翅雌を確認したことのある場所を順に辿っていく。

まず最初は森に入ってすぐのところにある割と大きめの灯火がターゲット。アギトアリは灯火周辺でも見つかることがあるが、光に集まっているのか、それとも単に近くに巣があっただけなのかはまだよく分からない。灯火に向かって飛んでいるのを見たわけではなく灯火周辺の地表で見つけたというだけだからだ。

目的のスポットの探索を始める・・・と、すぐに有翅雌を発見!

発見場所はやはり地表だ。

幸先の良いスタート。やはり今日は飛んでいる!

アギトアリの有翅雌

アギトアリの結婚飛行の時間帯はやはりこの19:00前後と見れば的外れではないように思う。

周辺を探索するとオスアリや脱翅雌もすぐに見つかった。

【参考】アギトアリのオスアリ(2021年)

今回見つかったアギトアリの脱翅雌

探索開始早々、ひとまずの収穫を確保できたことで落ち着いた精神状態で次のスポットへ向かう。

次に向かうのは森の中を走る車道脇の側溝の探索だ。

ここも過去にアギトアリの女王を見つけているスポット、暗い車道脇をライトで照らしながら歩いて行く・・・

しばらく探すと・・・いた!アギトアリの有翅雌だ。

アギトアリの巣が近い場所に差し掛かったのか、ここからは有翅雌、脱翅雌のオンパレード。

2~3m歩くごとに有翅雌か脱翅雌が見つかるというフィーバー状態に突入した。

探索開始直後は念の為にと有翅雌も採集していったが、あまりに頻繁に脱翅雌が見つかる為、途中からは脱翅雌のみを採集していった。

アギトアリの有翅雌

アギトアリの有翅雌2匹

アギトアリの脱翅雌

 

探索を始めてすぐにアギトアリが見つかったことから1時間程で採集は終了。

採集成果は脱翅雌11匹、有翅雌8匹。

帰宅後に有翅雌3匹が翅を落とした為、最終的には脱翅雌は14匹となった。

いや〜、たくさん獲れたな〜。

採集の成果

採集したアギトアリの脱翅雌


帰宅後、採集したアギトアリ新女王14匹を以下のように分けることにした。

 

・新女王1匹ずつを3セット(試験管巣)

・新女王2匹ずつの多雌管理を2セット(試験管巣)

・新女王3匹の多雌管理を1セット(試験管巣)

・新女王4匹とワーカー約30匹を同居させたコロニーを1セット(縦タイプ石膏巣+野外フィールド風エサ場)

下から・・・

・新女王1匹ずつ3セット(試験管巣)

・新女王2匹ずつの多雌管理2セット(試験管巣)

・新女王3匹の多雌管理1セット(試験管巣)

新女王4匹とワーカー約30匹を同居させたコロニー(縦タイプ石膏巣+野外フィールド風エサ場)

新女王単独、複数の新女王の多雌状態、多雌+ワーカーとの同居状態。

それぞれ異なる条件での飼育管理で、この日飛行を行ったアギトアリ新女王達がどのような経過を辿るのかは引き続き注目して見ていきたい。

 

8月下旬。多くのアギトアリが飛び交った夜はこうして幕を下ろした。

 

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アメイロオオアリ、カウント。

我が家で最も大きなタイプの飼育巣で飼育しているコロニーがある。

よ〜いちさんの木製巣で飼育しているアメイロオオアリだ。

アメイロオオアリのコロニー

 

このコロニーは2019年3月に大阪ではないとあるフィールドで枯竹内で越冬していた女王1匹とワーカー1匹の零細コロニーを採集したもの。状況的に2018年の晩夏に飛行した新女王のコロニーだろう。

 

かねてから見つけてみたいと思っていたアリで、且つ僕の活動地域である大阪では見つけられていない種であることからまさに"虎の子の女王"。

女王(ワーカーも)を見るのも初めてであれば飼育ももちろん初めて。

枯枝で見つかったことから"石膏巣で加水少なめ"という環境で飼育を始めた。

枯竹から採集した女王1匹、ワーカー1匹の零細コロニー。"小型石膏巣、加水少なめ"で管理。

"虎の子の女王"を失いたくないハラハラと「もっとこういう飼育巣の方が良いのではないか」という試行錯誤から様々な飼育巣への引越しを経て、2022年からは現在のよ〜いちさんの木製巣に入居した。

youtu.be

youtu.be

ほぼ巣内への加湿は無しの状態ながらコロニーは安定し、今年に入ってもさらにコロニーは拡大した。

 

2019年を1年目とするならば5年目となるこのコロニー。

このあたりで一度ワーカー数をカウントしてみようかなと思い立った。

カウント方法はコロニーの写真を撮影して画像にドットを打っていく"ドット法"。昔よくやっていたな〜

おもて面下段。ワーカー294匹。

おもて面上段。ワーカー数6匹。

裏面下段。ワーカー数342匹。

裏面下段。ワーカー数3匹。

おもて面下段。ワーカー数294匹。

おもて面下段。ワーカー数6匹。

裏面下段。ワーカー数342匹。

裏面下段。ワーカー数3匹。

 

合計ワーカー数645匹。

 

カウントの結果、アメイロオオアリのコロニーのワーカー数は645匹となった。

初めての飼育で突然調子を崩す日が来ないかと日々ハラハラしながら過ごしてきたが、気付けば我が家のアメイロオオアリは「大コロニーの一歩手前」というところまで成長してくれていた。

表裏両面で且つ上下二段接続という特大容量のよ〜いちさんの木製巣では600匹を超えるアメイロオオアリを持ってしても下段の表裏だけでコロニーは収まっている。

コロニー規模が1000匹を超え、上段のスペースも使われ始める日は来るのか、今後も調子を崩さずに成長を続けてもらいたい・・・!

 

 

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北関東の山地で出会ったオオアリの仲間。

8月上旬の北関東アリ観察旅行。

平地での観察に加えて山地帯でもアリを観察することが出来た。主な観察地は標高1400~2000mのエリア。

山地でのアリ観察



標高1400m付近で主に観察出来たのはムネアカオオアリ。8/4に結婚飛行後の脱翅雌が見つかったのもトピックスではあるが、注目はワーカー達だ。

8/4早朝に見つかったムネアカオオアリの脱翅雌

一般的にムネアカオオアリは標高が高い地域程体色が黒化する傾向にあり、今回のような場所に来た時にはムネアカオオアリの色を確認することも楽しみの一つだ。

さてさて、今回はどんなムネアカオオアリが見られるかな…

 

ムネアカオオアリは主に標高1400m前後の森林地帯で観察することが出来た。遠目に既に少し暗い色に見えるが果たしてどんな具合だろうか…

手に取ってみるとやはりやや黒化傾向が見て取れる。

全体的に前寄りの部位、前胸から中胸にかけて一般的なムネアカオオアリよりも黒い色となっている。過去にはほぼ完全に黒化した個体を見つけたが、前伸腹節や腹柄節に一部赤みが残っており、やはり傾向としては前から後ろに向かって黒化が進んで行く傾向にあるのだろう。

一方で、黒化は前方からグラデーション的に連続的な色の変化となっており、前胸のみ明確に黒く中胸以降はハッキリと赤いニシムネアカオオアリとは違うのも面白いところだ。

黒化傾向のあるムネアカオオアリのワーカー

黒化傾向のあるムネアカオオアリのワーカー

ムネアカオオアリの観察を楽しんだ後は標高を上げて2000m付近へ。

この森に隣接するエリアでは過去にカラフトクロオオアリの脱翅雌やワーカーも見られている。

ポイントは違うがここでもカラフトクロオオアリは見られるだろうか。

森を歩いて探索していくが森林内では地表を徘徊したり石や落枝の下などに営巣するアリはほとんど見られなかった。(ちゃんと探せばきっとどこかに潜んでいるんだろうな…)

しばらく歩いていると林道の木枠を歩く大きな影を見つけた。カラフトクロオオアリだ…!

やはりこの森にも棲んでいたか…でも見つけたワーカーは脚を欠損し弱っていた。どこから歩いてきたんだろうか。

それ以降、しばらくの間はまた何も見つけられない時間が続いた。

やっぱりさっきのワーカーはイレギュラーな場所にいたんだろうか…?

しばらく進むと森林内に大きな岩が露出した岩場があった。そこを観察すると…いた!

岩場を歩き回るカラフトクロオオアリのワーカー。

今度は弱った個体ではなく元気なワーカーであった上に複数のワーカーが確認出来た。

林内の岩肌を歩くカラフトクロオオアリのワーカー

カラフトクロオオアリのワーカー

岩場付近をしばらく探索したが残念ながら巣口などは発見出来なかった。また、時期的に脱翅雌なども見つからないか密かに期待していたが、こちらもそう上手くはいかず…

しかしながら、このエリアで2度目のカラフトクロオオアリ観察が叶った。

1回目の観察は「点」、2回目の観察では「線」となる。

このエリアでのカラフトクロオオアリの生息地がより立体的に想像出来るようになる。そんな真夏の観察旅行だった。

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ウロコアリとキタウロコアリ

栃木県鹿沼市のフィールドでのアリ探索。

急な雷雨に見舞われ急遽ドングリ採集に目的を変更。

豊かなリター層から掘り出した朽ちたドングリからはいくつかの種のアリが見つかった。

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数コロニー見つかったのはウロコアリの仲間。

朽ちたドングリの中から見つかったウロコアリの仲間

ウロコアリの仲間が見つかった時にはまず大顎の形状を見ることにしている。

大顎が棒状ならウロコアリ属(旧分類)、ペンチのような短い三角形ならアゴウロコアリの仲間(旧分類)となる。

今回見つかったのは全て大顎が棒状のウロコアリ属(旧分類)だった。

地域的に、ウロコアリ属(旧分類)だった場合の種の選択肢は少なく(ウロコアリ2mm、キタウロコアリ2mm、オオウロコアリ3mm)、特に明確にサイズの違うオオウロコアリ以外の2種はとても良く似ているとされていることから2mmサイズのウロコアリ属(旧分類)が出た場合は「どうせウロコアリだろう」とスルーしてしまうことが多かった。

 

しかし、今回出てきたウロコアリ属(旧分類)の数コロニーを見比べていると1コロニーだけ何か雰囲気の違うコロニーが混ざっていることに気付いた。

いつも見るウロコアリに比べてちょっとだけ色が濃いような…、ちょっとだけ大きく見えるような…

少し雰囲気が違うと感じたウロコアリの仲間

 

ただし大きく見えると言ってもオオウロコアリ程の大きさ(3mm)はない。

 

もしかしたらウロコアリとは違う種かもしれないと思い、細かく見てみるとことにした。

日本産アリ類図鑑の分岐検索を辿ると案の定、候補はウロコアリとキタウロコアリに絞られた。

 

ワーカーにおいて2種を区別するポイントは「触角収容溝後端と中胸前部の立毛」の特徴。

該当の立毛はウロコアリでは「短く直毛」、キタウロコアリでは「長く縮れた立毛」であるようだ。

たった2mmのアリの毛の違い…

う〜ん、見分けられるだろうか…

 

我が家のアリ撮影カメラの主役OLYMPUS TG-6ではここまで細かい部位を見るのは厳しそうだ。

OLYMPUS TG-6

棚の奥から顕微鏡を引っ張り出してきて使ってみることにした。

 

サンプル1「ウロコアリ」

サンプル2「何か違うと感じていた方のウロコアリの仲間」

あ〜、意外とちゃんと見えるな…

見たかった胸部の立毛もハッキリと確認出来る。

ちゃんと見えさえすれば見分けられるものなんだな〜

比較の為に同時に観察していたウロコアリの胸部立毛は「直毛」、何か違うと感じていた方の立毛は「長く且つ縮れて」いたのだ。

そうか。。

キタウロコアリだったのか。。

キタウロコアリのワーカー

キタウロコアリの女王

今まで「すごく似ていて区別が難しいから」と敬遠していた小さな小さなウロコアリ属のアリ達。

事前にインプットされていたイメージよりも区別のポイントは明確で(見えさえすれば)、肉眼で見た際にも「色の濃さ」「わずかな大きさの違い」からウロコアリとキタウロコアリは違った雰囲気を纏っていた。

そうか。。

ウロコアリとキタウロコアリはワーカーでも判別出来るのか。。

顕微鏡を使って2mmの極小サンプルと格闘すること小一時間。

僕は1人静かに小さな感動を覚えた。

 

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かつての”マイフィールド”。栃木県内のアリスポットを再訪する。

先日、栃木の実家に帰省した。

季節は8月上旬。

年に一度くらいは帰省しているが、実際に栃木に住んでいたのは10年以上前のことだ。

 

栃木に住んでいた頃、割とよく通っていたフィールドがある。県の南西部、鹿沼市のとあるスポットだ。

鹿沼市のとあるスポット

一応遊歩道などが設けられているが人は少なく森も比較的手付かずで、かつてはトゲアリのコロニーが何コロニーも観察できた場所。

何を隠そう"蟻のエンサイクロペディア"のバナーなどに使っている「森の中で飛行のタイミングを伺うトゲアリ有翅雌」の写真はこの鹿沼市のフィールドで撮影したものだ。

飛行のタイミングを伺うトゲアリの有翅雌

 

十数年前、栃木を旅立って以降、不覚にもこのフィールドの名前を忘れてしまったことから芋蔓式にそこへ行く道も忘失…、頭の中には鮮明に風景を思い描けるのに辿り着くことが出来ない幻の地となってしまっていた。。

 

今回の帰省中、どうにかそこに辿り着けないかと検索にふけっていると…

あ!あった…!ここだ!!

幸運にもその場所を見つけ出すことに成功したのだ。

 

翌朝、十数年ぶりにかつて自分で見つけた"マイフィールド"へ向かう。

「トゲアリはまだいるかな?」

「クサアリもたくさんいたな」

「でも時期的にはアズマオオズアリの脱翅雌がいたら嬉しいな…」

 

実家から車で40分程で到着。記憶に残っていたままの風景。

「変わってないな〜」

ノスタルジーに浸りつつも早くアリが見たい。

駐車場から森の方へと歩いていく。

 

ゴロゴロ…!

 

ん?

頭上から嫌な響き…

気付けば辺りは急に暗くなって上空には真っ黒な雲が立ち込めていた。。

ま、マズイな…

程なくしてポツポツと雨が降り始め、その雨はすぐに土砂降りへと変わった…

そうだった…我が栃木県は全国有数の"夏の雷"が多い県。

こんなタイミングで来たか…ゆっくり観察したかったのに…

 

頭上に遮るものが無ければ一瞬でずぶ濡れだ。

やむなく観察の方針を変更し、森に覆われ雨の影響がいくぶん和らぐ林床でドングリでも拾って帰るとしよう。

手袋を付け、自然度の高いフカフカのリター層の下を探る。

この森はドングリも豊富だった。昔はドングリなんて気にしてなかったな〜

林床に埋もれたドングリを拾う



リター下の程良く朽ちたドングリをビニール袋に半分くらい集めたところでタイムアップ。

雨足が一段と強くなり、帰路に就くことにした。

帰宅後、拾ってきたドングリを調べるといくつかの種のアリのコロニーが見つかった。

自然度が高い森で拾ってきたドングリからはやはり高頻度でアリが見つかるものなんだな〜

確かにリターはかなり広範囲にフカフカに積もっていたし朽ちたドングリも多かったもんな〜

 

出てきたアリについては後ほど別記事にて・・・

 

中からアリのコロニーが見つかったドングリ。

 

アブラムシに集まるツヤクロヤマアリ

ツヤクロヤマアリの生息地に行ってきた。

僕が住んでいる大阪からは遠い場所なので頻繁には来れないが、来れば必ずツヤクロヤマアリが観察できる場所だ。

時期的にあわよくば飛行後の新女王など見つけられないかと考えていたが残念ながらそこは空振り…

しかし生息地では彼らの行動を観察することが出来た。

 

アブラムシに集まるツヤクロヤマアリ

アブラムシに集まるツヤクロヤマアリ

アブラムシに集まるツヤクロヤマアリのワーカー。

アブラムシの出す甘露を集めているのだろう。実際にツヤクロヤマアリの巣は草の根際やそのすぐ近くに作られていることが多い。きっとこれらのアブラムシの甘露を集めるのにも便利な場所なのだろう。

 

また、周辺の地表では昆虫の死骸などを運ぶワーカーの姿がたくさん見られる。

昆虫の死骸に集まるツヤクロヤマアリ



甘露と昆虫。

ツヤクロヤマアリの生活を支える二つの要素を実際に観察出来た1日だった。

 

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