ウロコアリとキタウロコアリ
栃木県鹿沼市のフィールドでのアリ探索。
急な雷雨に見舞われ急遽ドングリ採集に目的を変更。
豊かなリター層から掘り出した朽ちたドングリからはいくつかの種のアリが見つかった。
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数コロニー見つかったのはウロコアリの仲間。
ウロコアリの仲間が見つかった時にはまず大顎の形状を見ることにしている。
大顎が棒状ならウロコアリ属(旧分類)、ペンチのような短い三角形ならアゴウロコアリの仲間(旧分類)となる。
今回見つかったのは全て大顎が棒状のウロコアリ属(旧分類)だった。
地域的に、ウロコアリ属(旧分類)だった場合の種の選択肢は少なく(ウロコアリ2mm、キタウロコアリ2mm、オオウロコアリ3mm)、特に明確にサイズの違うオオウロコアリ以外の2種はとても良く似ているとされていることから2mmサイズのウロコアリ属(旧分類)が出た場合は「どうせウロコアリだろう」とスルーしてしまうことが多かった。
しかし、今回出てきたウロコアリ属(旧分類)の数コロニーを見比べていると1コロニーだけ何か雰囲気の違うコロニーが混ざっていることに気付いた。
いつも見るウロコアリに比べてちょっとだけ色が濃いような…、ちょっとだけ大きく見えるような…
ただし大きく見えると言ってもオオウロコアリ程の大きさ(3mm)はない。
もしかしたらウロコアリとは違う種かもしれないと思い、細かく見てみるとことにした。
日本産アリ類図鑑の分岐検索を辿ると案の定、候補はウロコアリとキタウロコアリに絞られた。
ワーカーにおいて2種を区別するポイントは「触角収容溝後端と中胸前部の立毛」の特徴。
該当の立毛はウロコアリでは「短く直毛」、キタウロコアリでは「長く縮れた立毛」であるようだ。
たった2mmのアリの毛の違い…
う〜ん、見分けられるだろうか…
我が家のアリ撮影カメラの主役OLYMPUS TG-6ではここまで細かい部位を見るのは厳しそうだ。
棚の奥から顕微鏡を引っ張り出してきて使ってみることにした。
あ〜、意外とちゃんと見えるな…
見たかった胸部の立毛もハッキリと確認出来る。
ちゃんと見えさえすれば見分けられるものなんだな〜
比較の為に同時に観察していたウロコアリの胸部立毛は「直毛」、何か違うと感じていた方の立毛は「長く且つ縮れて」いたのだ。
そうか。。
キタウロコアリだったのか。。
今まで「すごく似ていて区別が難しいから」と敬遠していた小さな小さなウロコアリ属のアリ達。
事前にインプットされていたイメージよりも区別のポイントは明確で(見えさえすれば)、肉眼で見た際にも「色の濃さ」「わずかな大きさの違い」からウロコアリとキタウロコアリは違った雰囲気を纏っていた。
そうか。。
ウロコアリとキタウロコアリはワーカーでも判別出来るのか。。
顕微鏡を使って2mmの極小サンプルと格闘すること小一時間。
僕は1人静かに小さな感動を覚えた。