何だかいけそうな気がする…!6月採集エゾクシケアリ女王
6/4採集のエゾクシケアリの女王。
この女王は不思議なことで一杯だ。
まずは採集地。この個体は和歌山県で得られ、近くの河川沿いには割としっかりとした生息地が広がっていた。
エゾクシケアリの生息地は「中部地方以北」というイメージを持っていただけにそもそもここにエゾクシケアリがいたこと自体驚きだが、僕が持つこの「中部地方以北」というイメージは日本産アリ類画像データベース等に由来しておりこの情報は古くかつ不完全だ。
改めて調べるとエゾクシケアリの生息地はもう少しだけ西方、南方に広がっているようなデータが見つかった。
それにしても北方系のエゾクシケアリがこんなところにまで棲んでいるなんて意外だ…
もう一つは女王が見つかった時期。
エゾクシケアリの結婚飛行の時期は7月以降の夏季…と思っている。
この個体を採集したのは6/4で1ヶ月以上早い。
しかし、クロナガアリが3月中旬には飛行し、クロヤマアリやクロクサアリが4月に飛んだ情報もあった今年、多くの種で大幅に飛行時期が早まった印象があることを考えると「6月上旬、エゾクシケアリ」はギリギリ可能性のあるラインなのだろうか?
…かなり微妙だな〜、生息地南限に近いだろうからその点でも早いのかな〜
このエゾクシケアリ女王は"南限に近い場所でかつ近年の結婚飛行時期の早まり"によって6月上旬に飛行を終えた個体という可能性もあるし、何らかの理由で巣外へ出てきてしまった既存コロニーの女王という線も無くは無い(怪我などで弱っている気配がないので可能性は低いかな〜?)。
かくしてこの"季節外れ(?)"の女王の飼育管理が始まった。
飼育巣は3wayメッシュ石膏巣。この女王は巣内で常に歩き回り落ち着きがないので石膏で小さな板を作りパーテーションとして巣内に追加。すると女王はそこへ落ち着いてくれた。…良かった。
エサは体力補強の為の少量の蜜エサに加え、ヒラタコクヌストモドキを投入。
クシケアリ属ではないが、ツヤクシケアリ属のツヤクシケアリは女王が単独で採餌を行うという朧げな記憶がある。クシケアリもそんな行動をする可能性があるかもしれない(重ねて、クシケアリ属とツヤクシケアリ属は違う属ですが…)。
割と頻繁に巣内を歩き回るエゾクシケアリ女王はヒラタコクヌストモドキにもすぐに反応し齧る仕草を見せた。
女王は程なくして産卵を開始。
順調に幼虫も育ってきた。
幼虫が育ってからは与えたヒラタコクヌストモドキは幼虫のもとへ運ばれ幼虫はそれを食べる…うん、良い感じ!
7月中旬、蛹の姿が確認できた。
蛹は裸蛹タイプ。
しばらくしたらワーカーが羽化するだろう。
何だかこのままいけそうな気がする!
…果たして、結局この女王は新女王だったのかな??